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開設20周年、安心と信頼の治療院
世田谷区祖師谷大蔵下車 徒歩2分

鍼術秘要下之巻

加賀   坂井豊作 鍼術
紀伊   中村謙作 訳述
男 禮蔵 校正

咳嗽針及方剤

咳嗽症ニ針術ヲ施スコト。大抵勞咳針ノ如クナレドモ。勞咳症ニ至ラザル者ハ。其針數ヲ少クシ。且ツ數月ノ間刺ズシテ可ナリ。而シテ此症モ亦服薬ヲ主トセズンバアルベカラズ。

頚項背等強痛并肩痛針及方剤

頚。項。背等強痛。并ニ肩痛ヲ針スルニハ。両耳下ノ大筋。項ノ左右。両臑ノ外経ヲ臂ニ至ルマデ刺シ。夫ヨリ背ノ両二行等ヲ。皆法ノ如ク刺スベシ。

臑痛針及方剤

臑痛ミ。或ハ酸痛シテ。手ヲ揚ルコト能ハズ。頭モ回顧スルコト能ハザル者ニ針スルニハ。先ズ両耳下ノ筋ヲ刺シ。次ニ両肩ヲ刺シ。次ニ臑ノ外経ヲ。肩ノ曲リ廉ヨリ其経ヲ追フテ。手首マデ刺シ。次ニ腋ノ下ノ前経ニテ。胸ノ方ト臑トヲ刺シ。図後ニ出ス次ニ腋ノ下ノ後経ニテ。背ノ方ト臑トヲ刺シ。此図モ亦後ニ出ス。是前後ノ二経ニ於テ。臑ヨリ臂マデつかミ見テ。凝絡トナレバ。悉ク刺スベシ。次ニ背ノ二行モ。十四椎ヨリ上ヲ刺スベシ。
手太陽小腸経ヲ。腋ノ下ニテ針ヲ刺ス図。
図ノ如クつかミ見テ。ゴリゴリトシタル凝リ甚シケレバ。即チ病絡ナリ。
此経ヲ針スル法。上ヨリ刺シ始メテ。下ニ向ヒ。四寸許リノ間。大抵三四針許リスベシ。
臑ノ後ノ経ニテ針ヲ刺ス図【図24】
此経モ図ノ如ク攫ミ見テ。彼ノゴリゴリトシテル凝リ甚シケレバ。病絡ト知ルベシ。【図25】
此経モ上ヨリ刺シ始メ。肱マデノ間ヲ。五六針スルコト常法ナリ。夫ヨリ其経ヲ追フテ。臂モ刺スベキナリ。【図26】

手厥陰心包経ニ針スル図
図ノ如ク腋。臑倶ニ。各三四針許リツヽ刺スベシ。
手ノ食指ノ表面通リ。腕骨ノ上。三寸許リノ所ニ當テ。図ノ如ク少シ斜ニ隆起シタル凝絡アル者ハ。肱ノ方ヨリ拇指ノ方ニ向ヒ。二三針スレバ。必ス消散スル者ナリ。【図27】

鼓脹針及方剤

鼓脹病ハ難症ナレトモ。其腹皮ニ青筋浮ミ見ハレザル内ハ。治シ難シトセズ。既ニ青筋浮ミ見ハルヽト云ヘトモ。指ニテ其膚ヲ押シ見ルニ。指ノ跡乍チ起リ愈ル者ハ。能ク方剤ヲ撰ビ。針術ヲ兼ルトキハ。猶能ク治スルナリ。其皮表中ニ水気満チ。指跡久シク起リ愈ヘザル者ハ。不治トスベシ。而シテ其針術ハ。両耳下ノ筋。両肩両手ノ内外経ヲ上ヨリ手首マデト。背ノ両二行。両三行。両足ノ内外経ヲ股ヨリ脛マデ等ヲ刺スコト。皆法ノ如クスベシ。軽症ナレバ。一月許リ刺シ。 重症ナレバ。二三ケ月許リ刺ザレバ治セザル者ナリ。

留飲針及方剤 附噫気呑酸

留飲針ハ両肩ト。背ノ両二行ヲ。肩ノ邊ヨリ。第十四椎邊マデ刺スコト常方ナレトモ。又項ノ両筋。両臑ノ内外経。背ノ両二行ヲ。上ヨリ腰マデ等ヲ悉ク刺ス症モアルナリ。宜ク病症ニ従ヒ斟酌スベシ。唯服薬ヲ主トシテ。軽症ハ半月。重症ハ二ヶ月許リ針スレバ。必ズ大効アルナリ。

通風針及方剤 附白虎歴節風

通風症ニ針スルニハ。耳下ノ両筋。両肩。両手ノ内外経。両腋ノ下ノ前後ノ経。背ノ両二行。同ク両三行。両足ノ内外経等ヲ。悉ク法ノ如ク刺スベシ。然レトモ右ノ數所ノ絡ヲつかミ見テ。凝絡アル所ハ針ヲ多クシ。凝ラザル所ハ針ヲ少ナクシ。又痛ミノ甚キ所ハ。尤モ多ク刺スベシ。而シテ此症ハ。間々針ノ瞑眩有テ。種々ノ症ヲ見ハスコトアレトモ。恐ルベキコトニ非ズ。必ズ効アル徴ナリ。
白虎痛ヲ針スルニハ。其甚シク痛ム所ニ於テハ。手モ近ケ難キ者ナリ。然ル者ニハ。醫ノ手ヲ觸ルヽニ。患者其觸ルヽコトヲ覚ヘザル程ニ。随分氣長ク除々ニスベシ。既ニ患者ノ膚ニ。醫ノ手ヲ當ルニ及ンデ。又針ヲ除々ニ。患者ノ覚ヘザル程ニ刺スベシ。如此ニシテ二針。或ハ三針ノ後ハ。常ノ通リニ刺シテモ。格別ニ針ノ痛ヲ知ラザル者ナリ。是症ヲ刺スニモ。経絡ニ随フテ刺スコト常法ナレトモ。然レトモ又法ニ拘ハラズ。唯其痛ノ絡ニ依テ。上下左右スルコトアリ。其時宜 ニ従フベシ。

鶴膝風針及方剤

鶴膝風ハ膝ノ腫痛スル症ナレトモ。然レトモ耳下ノ両筋。両肩。両手ノ内外経両腋ノ前後ノ経。背ノ両二行。同ク両三行。両股ノ内外経等ヲ悉クつかみテ。凝リタル絡アレバ。法ノ如ク刺シ終テ後。其疼痛スル膝ニ至テハ。白虎痛ノ針法ノ如ク刺スベシ。此症ト。白虎痛トノ針方ハ。専ラ醫ノ心匠ヲメグラス所ナレバ。紙筆ヲ以テ。其術ヲ委ク書シ難タケレバ。活物ノ患者ニ対シテ。宜ク心匠スベキナリ。其疼痛スル膝ニ針スルヤ。大抵二十刺許リスベシ。
此症ハ脾ノ湿熱薫蒸シテ發スル者ナリ。而シテ此レニ水血ノ二因アリテ。血ノ渋滞ヨリ發スル症ハ。腿脚ノ血。膝頭ノ聚リ。漸ク腫痛スルニ至ル。水ノ渋滞ヨリ發スル症ハ。股脛ノ肉脱セズ。劇痛シテ。遂ニ膝骨ノ内ニ。膿水ヲ生ズルニ至ル者ナリ。

委中毒針及方剤

委中毒ハ尤モ難症ニシテ。外療家ノ手ヲ束子テ。其斃ルルヲ待ツモノナリ。其症タルヤ。膝後膕内ニテ。約紋ノ所。即チ委中ノ穴ナリ。堅硬ニシテ石ノ如ク。微ク紅ク。微ク腫レ。久フシテ紫暗色ニ変シ。自潰シテ稀水ヲ流シ。臭穢近クベカラズ。其潰ヘテ後却テ大ニ腫レ。疼痛。往来寒熱シ。膝頭ノ肉脱シテ削ルガ如ク。身體羸痩シ。疲労日ニ加ハツテ。終ニ死スル者ナリ。其病因ハ。多クハ先天ノ遺毒ノ爲ニ脾胃不和シ。経血凝結シテ發スル者ナリ。其毒未ダ深カヽラザル内ニ。早ク傷寒論。金匱中ノ方ヲ撰ビ。針術ヲ兼子施ストキハ必ズ治セン。若シ毒十分ニ満ルトキハ。則チ治術ノ及グ所ニ非ルナリ。其針術ハ。鶴膝風針ト同フシテ。患所ノ違ヒアルヲ以テ。其刺ス所ヲ異ニスルノミ。

打撲針及方剤

打撲症ハ新旧倶ニ針術ヲ施スヲ佳トス。其術ヲ施スヤ。或ハ手。或ハ足。其他一身中。何レノ所ヲ損傷スルモ。皆其損傷スル経絡ヲ追フテ刺スベシ。譬ヘバ手ノ曲池邊ヲ損傷スレバ。肩ノ邊ヨリ其経ヲ追フテ。手首ノ邊マデ法ノ如ク刺ス。其他何レノ所ヲ損傷スルモ。皆此法ニ従フベシ。

梅毒骨痛針及方剤

梅毒ニテ骨疼ミ。或ハ筋絡一二ケ所。或ハ三四ケ所モ隆起シテ。膿潰セズ。痛ンデ歩行モ自由ニ成リ難キ者ハ。服薬ヲ主トシテ。針術ヲ兼子施スヲ佳トス。其針術ヲ施スコト。大略打撲針ノ如クスベシ。軽症ナレバ二七日。或ハ三七日許リ刺ス。重症ナレバ。一二ケ月許リ刺ストキハ。大ヒニ効アラハルヽ者ナリ。

小便不利并閉塞針及方剤

小便不利。或ハ閉塞スル症ニ針スルニハ。両肩ト。背ノ両二行通リトヲ刺ス若シ重症ナレバ。又両三行ト。股ノ両内外経トヲ刺ス。尤モ重症ナレバ。膝ヨリ下ノ両内外経ヲモ刺スベシ。
會陰打撲ニテ小便閉スル者。カテイテルモ進マズ。薬方數百中ヲ撰ビ用ユレトモ。猶通ゼザル症ニ於テ。篤一術ヲ得タリ。其方。患者ノ肛門ニ指ヲ入レ。膀胱口邊ニ當ル所ヲ推セバ。必ズ膀胱ニ応ジテ。便心ヲ催フス氣味アルナリ。指ヲ肛門ノ内ニ入ルコト。大抵一寸ヨリ。一寸四五分ノ間ナリ。能ク其尿道ヲ見定メ。ランセツタニテ切リ。尿道マデ穿ツトキハ。忽チ小便出ル者ナリ。若シ出難キトキハ。其針痕ヨリカテイテルヲ入ルトキハ。存外ニ心易ク進ンデ。小便能ク通スル 者ナリ。其後ノ小便ノトキハ。必ズ針痕愈テ。此レヨリ小便漏ル者ニ非ズ。余モ初ハ之ヲ恐レタレトモ。巳ムコトヲ得ズ。膀胱口邊ヲ切リ。カテイテルヲ以テ小便ヲ取リ。其後ノ小便ノトキハ。尿道中ノ悪血モ去リ。針痕モ塞リテ。少シモ害アルコトナシ。

癇疾針及方剤

夫レ癇疾ハ専ラ服薬ヲ主トスル所ナレトモ。尚針術ヲ兼子施スヲ佳トス。其針術タルヤ。両耳下ノ筋。両肩。両手。背ノ両二行。両足ノ経等ヲ悉ク刺スベシ。此症ニハ針ノ瞑眩ニテ下血。或ハ吐血スルコトモアレトモ。此レニ恐レズ。続ヒテ七八日。或ハ十五日モ針スレバ効験見ハル。然レトモ一二月。或ハ四五月モ刺ザレバ。全治スルコトナキ者ナリ。

瘰癧針及方剤

傷寒論ニ依テ瘰癧ヲ論スルトキハ。則チ肺水欝シテ發スルト。肝血伸ビズシテ發スルコトノニ症ナリ。蓋シ心ノ血陽ハ。腎水之ヲ鎮ム。肝ノ血陽動クモノハ。肺水之ヲ鎮ム。故ニ肝火肺ニ乗スルトキハ。血瘰トナリ。肺水肝ヲ尅スルトキハ。水瘰トナル。是ヲ以テ肺水欝シテ發スル者ハ。其形チ圓ニシテ。色變セズ。肝血伸ビズシテ發スル者ハ。其形チ方ニシテ色赤シ。然ルユエンノ者ハ。肺肝倶ニ脾胃ノ助ケヲ得ザレバナリ。
瘰癧ハ初發。又ハ未ダ重症ニ至ラザル前ニ。方剤ヲ撰ビ。針術ヲ兼ルヲ佳トス。其針術ハ。大抵前条ノ癇疾症ノ如クシテ。二ヶ月許リノ後ニハ。必ズ全効ヲ得ル者ナリ。

馬刀癧針及方剤

馬刀癧ハ。多クハ核ヲ耳下ニ結ンデ。其形チ圓ク長シ。其堅キコト石ノ如クニシテ。潰ヘザルナリ。此症ノ針法モ亦前症ノ如クシテ可ナリ。

氣腫針及方剤

氣腫ハ頤ノ下ニ結核有テ。外邪ヲ感ズル毎ニ起脹シ色赤クシテ痛ミアリ。其瘡口ハ急ニ開カザレトモ。後ニハ遂ニ膿潰シ。久シク治セザル者ナリ。此針法ハ瘰癧ノ法ノ如クシテ可ナリ。

蝦蟆瘟針及方剤

蝦蟆瘟針ノ針法モ。亦瘰癧針ノ法ノ如シ。

傷寒發頤一名寒毒針及方剤

此症傷寒ヲ患ヒ。汗吐下ノ誤治ヨリ。其邪残リテ。欝結シテ起腫スル者ナリ。其色變ゼザル者ハ。肺陰勝ツユエニ惡寒ス。其色赤キ者ハ。肝陽勝ツユヘニ發熱ス。其針術ハ。亦瘰癧ノ法ノ如クス。

小児驚風針及方剤

小児ノ驚風ニ陰陽ノ二症アリ。身熱シ。面赤フシテ。ちく搦ヲ發シ。目上視シ。牙関緊硬スル者ハ。陽ノ急驚風トシ。吐瀉病ヲ患ヒテ後。或ハ只吐シテ瀉セズ。日ニ虚弱ニ至リ。或ハ面色白クシテ脾虚シ。或ハ冷テ驚ヲ發シ。其ちく搦ハ甚シカラズシテ。微々ニ目上視シ。手足微動スル者ハ。陰症ノ慢驚風トスルナリ。
鍼法ハ両耳下ノ大筋。両肩。両手ノ内外経ヲ。肩ノ曲リ角ヨリ手足マデ等ヲ刺シ。又両腋ノ下ノ前後ノ経モ。凝リアレバ。悉ク刺スベシ。夫ヨリ背ノ両二行。両三行。両足ノ内外経ヲ。股脛倶ニ刺ス。右何レノ経ニテモ。初メニ云フ如ク。つかミ見テ凝絡アレバ。針ヲ多クシ。凝絡ナケレバ。針ヲ少クシ。或ハ刺サズトモ可ナリ。此レ陰陽ノ両症倶ニ同シ。

癖疾針及方剤

癖疾ハ世俗ニカタカヒト称ス。此症多クハ乳母ノ六淫。七情ヨリシテ。飲食停滞シ。邪氣相搏テナルナリ。其症両股ニ塊有テ。發熱。口乾キ。小便赤ク。大便結燥シテ。羸痩シ。或ハ火升テ牙関潰爛シ。其臭氣甚キ者ナリ。
針法ハ。驚風針ノ如クシテ可ナリ。

疳疾針及方剤

道三翁ノ曰ク。経曰ク。數食肥令人内熱數食甘令人中満其病因肥甘所致。故名曰疳。或人ノ曰ク。疳ハ乾ナリ。痩瘁シテ血少キナリ。二十歳ヨリ以下ヲ疳ト云ヒ。二十歳ヨリ以上ヲ勞ト云フ。多クハ小児肉ヲ食フコト太ダ早ク。厚味。甘味ヲ食フコト多キニ因テ。脾胃ニ熱。或ハ積。或ハ疼等ヲ生シテナル者ナリ。然レトモ其熱虚ナルガユヘニ。妄リニ涼薬ヲ過用スベカラズ。其虚ヲ療ズルモ。峻ドニ温補ヲ用ユベカラズ。而シテ熱疳。冷疳。五疳ノ別チアリ。五疳ハ。驚疳。風疳。食疳。氣疳。急疳ナリ。
鍼術ハ大抵驚風鍼ノ法ニ従フベシ。

氣絶針及手術

肋ラ。米齧ミ。眉骨等ノ禁穴ヲ打撲シ。或ハ陰嚢ヲシメ。其外一切ノ氣絶症ヲ針スルニハ。風池。風府此二穴ノ図解。カスミ目ノ部ニ出ス。ノ二穴。背ノ二行ヲ。上ヨリ腰マデ刺スベシ。然レトモ此症ハ。上唇ヲ摘ミ引キテ。人中穴ノ邊カタクナリタル者ト。小腹甚ダ柔ラカニナリタル者トハ。蘇生スル者ニアラザルナリ。
又一方。神闕ト。湧泉ノ穴トヲ針ス。
神闕ハ臍ノ中ナリ。此穴ヲ刺スニハ。臍ヨリ七八分上ニテ。任脈ノ三分許リ脇ヨリ。臍ノ真中ニ向フテ。左右ヨリ刺ス。湧泉ハ足心ナリ。此穴ヲ刺スニハ。足ノクビスノ内ツラノ方ヨリ。足心ヘ向フテ刺スコト。両足各二針許リス。
又一方。十四経中ニ門ノ名ノアル穴ハ。悉ク法ノ如ク刺スベシ。其穴ヲ取ル方。
雲門 手ノ太陰肺経ナリ。
胸ノ上ニテ。任脈ヲ去ルコト。左右各六寸ニシテ。横骨ノ下ナリ。
梁門 足ノ陽明胃経ナリ。
臍ヨリ鳩尾マデヲ八寸トシテ。臍ノ上四寸。任脈ヲ去ルコト。左右二寸ニアリ。
關門 同経ナリ。
梁門ノ下一寸ニアリテ。臍ノ上三寸ニ當ル。
滑肉門 同経ナリ。
關門ノ下二寸ニアリテ。臍ノ上一寸ニ當ル。
箕門 足ノ太陰脾経ナリ。
膝頭ノ内廉ノ上。一寸半ハ血海穴ナリ。其血海ノ上六寸ニアリ。此処内股ニシテ動脉アリ。又跪坐スレバ肉起リテ。魚腹ノ如シ。其起肉ノ上ナリ。
衝門 同経ナリ。
臍ノ上一寸ハ水分穴ナリ。其水分穴ノ傍。左右各四寸五分ハ大横穴ナリ。其大横穴ノ下各五分ニアリ。
神門 手ノ少陰心経ナリ。
手ノ小指ノ後ヘ。腕ノ横文ノ中ニアリ。即チ拳ノ後ノ尖リ骨ノ下。手ノ外クルブシノ上。両骨ノ間ニノ。拳ヲ握リテリキムトキハ陥ナル処ナリ。
風門 足ノ太陽膀胱経ナリ。
背ノ第二椎ノ下ノ両傍ニシテ。即チ二行通リナリ。
殷門 同経ナリ。
臀ノ下。陰股ノ上ノ横文ノ中。直ニ立バ。臀ノ肉ト股ノ肉トノ折レシテノ紋ノ真中ニ。承扶穴アリ。其承扶ノ下六寸ニアリ。
魂門 同経ナリ。
背ノ第九椎ノ下ノ両傍ニアリ。此レ二行通リナリ。
肓門 同経ナリ。
背ノ第十三椎ノ下ノ両傍ニアリ。此亦二行通リナリ。
金門 同経ナリ。
足ノ外踝ノ尖リ骨ノ下ニ。指頭ヲ容ル程ノ穴アリテ。其穴ノ真中ニ申脉穴アリ。其申脉ノ下ノ少シ前ニアリ。
幽門 足ノ少陰腎経ナリ。
臍ヨリ鳩尾マデヲ八寸トシテ。鳩尾ノ下一寸ヲ巨闕穴ト云フ。其巨闕ノ両傍。各五分ニアリ。
げき門 手ノ厥陰心包経ナリ。
掌ノ中央ニ動脉アリテ。無名指ト小指トヲ屈シテ。共二指頭ノアタルトコロヲ勞宮穴ト云フ。是勞宮通リ。掌ノ後ヘ。わんノ横文ノ中。両筋ノ間ヲ大陵穴トシ。其大陵ノ後ヘ五寸ニアリテ。肘ノ曲澤穴ヲ目的ニトルベシ。
液門 手ノ少陽三焦経ナリ。
手ノ小指ト無名指トノ間ニテ。陥リタル中ニアルン。拳ヲ握リテトル。
耳門 同経ナリ。
耳珠子ノ上ツラ。肌肉缺タル所。推セバ陥ル所ナリ。
京門 足ノ少陽膽経ナリ。
章門ノ後ヘニシテ。肋骨ノ十一枚目ノ先キニ。少シ瓢形ノ如クニナリタル陥中ニアリ。
章門 足ノ厥陰肝経ナリ。
人ノ肋骨ハ十一枚アリテ。其十一枚メノ骨頭ト。十枚メノ尖リトノ下ニシテ。二肋骨ノ間ナリ。此穴ヲ取ルニハ。患者ヲ側臥セシメ。下ニ成リタル足ヲ伸シ。上ニ成リタル足ヲ十分ニ屈ムベシ。
期門 同経ナリ。
両乳ノ真下ニシテ。肋骨ノ二枚メノ下廉ノ。陥タル中ニアリ。
あ門 督脈経ナリ。
後ノ髪際ヨリ。前ノ髪際マデヲ一尺二寸トシ。其後ノ髪際ヨリ上五分ニアリ。
石門 任脈経ナリ。
臍下二寸ニアリ。一ニ丹田ト名ク。
以上二十二穴針ハ。氣内ニ閉テ絶シタルヲ。其氣ヲ發達セシメンガ爲ナリ。是ヲ以テ閉タル門ヲ開ク義ナルユヘ。穴毎ニ門ノ字アリ。是故ニ久病ニシテ虚候ノ 者。或ハ陰陽ノ氣内ニ盡キタル者等ニ於テハ。効ナケレトモ。唯禁穴ヲ打撲シ。或ハ異形ノ者ニ驚キ。或ハ實症。或ハ急病ノ者等ノ。内ニ陰陽ノ氣未ダ盡キズシテ。気絶スル症ニ施スベキナリ。夫レ経穴ノ名ト云ヘトモ。古ノ人妄リニ文字ヲ用ヒザルコト以テ知ルベキナリ。
氣絶ノ薬方ハ。種々アリト云ヘトモ。甚ダ煩ハシキヲ以テ茲ニ録セズ。

氣絶ヲ救フ手術

凡テ屋上。或ハ水。或ハ橋。或ハ山ナドヨリ轉ビ墜テ。氣絶スル者ハ。皆禁穴ヲ打撲シ。陰陽ノ両氣内ニ閉塞シタルユヘナリ。此症尤モ甚キ者ハ。治術ノ及ブ所ニ非レトモ。其甚シカラザル症ハ。縦今治術ヲ施サズシテ打捨テ置クトモ。彼陰陽ノ両氣自然ト内ニ開ケテ。蘇生スル者ナリ。然レトモ醫タル者。氣絶症ヲ見テハ。暫時ト云ヘトモ打捨テ置クベキニ非ズ。故ニ上ニ云フ針術ヲ施シ。或ハ薬ヲ與ヘ。或ハ手術ヲ行フベシ。其手術ヲ行フヤ。先ツ上ニ云フ上唇ノ硬ト硬カラザ ルト。少腹ノ強弱トヲ視テ。而シテ患者ヲ抱キ起シ。醫其後ヘニ居テ。両膝ヲ立テ。其両膝頭ヲ患者ノ脊椎骨ノ両傍ニ當テ。左右ノ手ヲ患者ノ両脇ノ下ヨリ出シ。臍ト。氣海ト。丹田トノ間ニテ。食指。中指。無名指。小指ノ四指頭ヲ組合セテ。之ニ當テ。彼ノ膝頭ヲ當テタル所ト一度ニ力ヲ入テ。ウント一聲スル心持ニテ引シメ。且ツ少シ引上ル模様ニスベシ。此ノ引シメ引上ルトキ。打撲右ノ方ニ在レバ。右ノ方ヘ引シメ引上ル様ニシ。打撲左ノ方ニ在レバ。左ノ方ヘ引シメ引上ル様ニスベシ。此時患者ノ口ヨリ。呼吸少シク發出スル者ナリ。然レトモ矢張リ其引シメタル手ヲ放タズシテ。三四息程スル間ニ。徐々ニ緩ムベシ。四五息ノ後ハ。必ズ患者ノ呼吸次第ニ出テ。蘇生スル者ナリ。又曰ク。心下臍上ト。氣海。丹田ノ邊トヲ打撲スル者ハ。蘇生スルコトナシ。若シ蘇生スルコトアルモ。或ハ此ヨリ種々ノ病ヲ發シテ。終身ノ廢物トナリ。或ハ長命ヲ存ツコトナキ者ナリ。【図28】
又曰ク。人中。眉骨。肋骨等ノ諸禁穴ヲ打撲シ。或ハ陰嚢ヲシメテ。氣絶スルヲ救フ手術ハ。兵術家ニ於テハ。活ト称スルモノニシテ。其穴甚タ多クシテ。手術ノ異ナルコトモ亦多シ。今茲ニ悉ク録マント欲スレトモ。甚タ煩ハシキヲ以テ之ヲ略省ス。若シ悉ク其術ヲ得ント欲セバ。余ガ門ニ来テ学ブベシ。

外字