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開設29周年、安心と信頼の鍼灸院
世田谷区祖師谷大蔵下車 徒歩2分

鍼灸仮名読十四経治方 下之巻

津山彪編次

(1)銅人形総図

(2)癰疽門

癰疽の初て出る先其経絡の部分を看て其各々経に随ひて針を行ふこと間日なし。如し或ハ針。日を間するときハ効なし。日を遂ふて刺し。或ハ一日に再び刺し以て其毒を瀉するときハ十日に至らずして自ら安し。若し針。日を間て或ハ針五六度にして病者苦しみ半途にして癈れば死に至る。如し或ハ死セずとも腐肉より新肉を生じ。艱苦萬痛累月に及ぶ。其辛苦譬るに物なし。若し病人針治を欲セざれハ。急に騎竹馬の穴に灸すること七壮神効あらずといふことなし
○又方癰疽初め出の三日の前急に其腫物の頭に灸二十一壮自ら安し
△其初発は至りて小にして粟のごとく故に人ミな忽にして其毒を発するに至るを待て終に死するに及ぶ追ふて悔とも及ことなし若已に三日を過ときハ即ち騎竹馬の穴に灸各々七壮奇効あらざることなし
○癰疽諸腫或ハ痒からず痛ず色青黒のものハ肉先死す終に救べからす其初起に急に騎竹馬の穴に灸すること各々七壮
○癰疽発背皆日を遂ふて経絡に針を行へバ自ら安し然れは未能治すること能はず竟に熟し膿に至る三稜針を以て赤暈の四畔を刺すべし而して大針を以て腫物の頭を裂破る連日に悪肉盡く消し新肉已に生ずるなり

(3)騎竹馬の穴法

一條の蝋縄を以て病人の尺沢の横紋より。中指の端までを量り。載断。偖病者の衣裙を解き體を露し直竹の上に騎坐セしめ。尾窮骨に當て坐するに甚しめ彼先に量る蝋縄を脊より坐する竹の上に竪にし。縄の端盡る所の脊の上に借点し。更に別の紙捻を作り病者の中指の中の節を量り一寸となし。脊の借点より左右へ開き端の盡る所に各々灸七壮。止多く灸すべからず。此法を以て之に灸するときハ愈ざるものなし。蓋し是二穴ハ。心脈の過る所なり。凡癰疽の疾は皆心気留滞に於 て此毒を生ず。之に灸せば則心脈流通し。即時に安し以て死を起し生を回すの奇方なり

(4)腸癰門

腸癰ハ小腹より腰に連て痛ミ或ハ一脚を蹇。身熱すること火のごとく。小便数にして欠し。昼ハ微し歇ども夜劇きハ三十余日の後に膿をなす。未膿ざるの前。預め騎竹馬の穴に各々灸七壮神効あり。已に膿て後ハ肘の尖に百壮。膿汁注ぎ下ること一二鉢神効あり

(5)疔腫門

○疔腫面上口角に生ずるにハ。合谷。下三里。神門に針すべし
○手上に生ずるハ曲池の穴に二十一壮
○脊上に生ずるにハ肩井に七壮
△病の軽き重きを観て。重いものハ数を倍して灸すべし。併に騎竹馬の穴に灸七 壮

(6)蒜灸門

蒜を隔てて灸するの法ハ。其腫毒大に痛。あるひハ痛ず麻木するに先湿紙を以て其腫物の上を覆ひ其乾く所を候がふ。乃ち是腫物なり即ち蒜を片となし厚さ三分ばかりにし腫物の頭の上に置き之に灸すること五?にして蒜を更へ数々?べし。初め灸して疼ハ。灸して痛ざるに至る。初灸して痛ざるハ灸して痛に至る此則ち 欝毒を引の法なり。且回生の功あれバなり。若し腫色白して膿を作ざれハ日期を問ず宜く多灸すべし。若腫物大なるハ蒜を搗ただらし。患ところに鋪き艾を置て 灸するなり

(7)附子灸法

附子を削ること厚さ碁石の如く。正に腫物の上に着け唾にて附子を湿ハし艾を附子の上に置灸す。熱をして附子に徹セしむ乾かんとセバ更に唾つけ熱をして附子に徹セしむ屡々乾バ輒ち改ゆべし。艾気附熱と相撃て腫物に徹セしむ則ハ愈ざるものなり

(8)石癰門

腫堅して根あり石の如くなるを石癰といふ腫物の上に灸百壮或ハ二百壮毎日に?べし石子の如きものも砕け潰るヽなり

(9)風丹 并に火丹毒

三稜針を以て間もなく腫る所及び暈の畔を乱刺して多く悪血を出し翌日更に赤気の在るところを看て初めのごとく乱刺して血を捨ること糞のごとくすれバ神効有?瘤針し破るべからす。針する則ハ肆にす肉瘤針灸するときハ皆人を殺す。慎むべし血瘤針するときハ大に血を出す止ずして死す
△瘤に種々ありて皆能治し易からず。其数三十有六最も血瘤。肉瘤。?瘤ハ針灸の施しがたきなり膏薬服薬を以て治すべし

(10)蟠蛇癧

瘰癧の別名なり頂を繞て垓(核)を起すを蟠蛇癧と名附
○天井。風池。肘の尖に百壮。下三里。百労。神門。中渚。外関。大椎。皆倶に 灸して神効あり

(11)大小便

○大小便通セされハ。膀胱兪に三壮。丹田に二十一壮。胞門に五十壮臍下一寸半。両傍各々三寸に灸百壮。大腸兪に三壮
○小便黄赤にして。禁ゼざれバ。膀胱兪。三焦兪。小腸兪に針すべし
○小便痛ゼずして。臍下冷るにハ。胞門丹田。神闕。營衝。膀胱兪皆灸すべし
○小便難にハ。臍ニ対する脊骨の上に灸三壮
○小便に血交り出には胃兪。関元。曲泉。營宮。三焦兪。腎兪。気海に年の壮。 太冲に三壮膀胱兪。小腸兪。皆灸すべし
○腸鳴り溏泄して腹痛するにハ。神闕に百壮。三陰交に三壮

(12)腰脊門

○腰の辺より脊へかけて疼。溺水の濁にハ章門に百壮腎兪に百壮。膀胱兪。気海に二十一壮
○卒に腰痛て伸屈の自由なりがたきにハ腎兪。尾窮骨より上へ一寸に七壮づヽ。 婦人ハ八?に五十壮
○又法病者をして正しく立し細き竹を地より竪に臍を量りて竹に記しをつけ其竹を後の脊骨に着け。竹の上乃記しの当るところに灸すること年の壮に随ふ。是を俗に臍がへしと呼ぶ
○腰痛て腹の鳴にハ。神闕に百壮。胃の兪に年の壮。大谿。太冲。三陰交に五十壮。妙効あり
○老人の腰いたむには腎兪に三十壮。命門に五十壮。即効あり
○腰腫て倦く痛にハ崑崙。太冲。章門に二十一壮能愈るなり

(13)咳嗽門 併痰喘

凡痰喘ハ熱に因て上り大気の炎上より致ゆへなり
○咳逆久しく止ざるにハ大椎より五の椎に至る節の上に灸すること年の壮に随ふ而して期門に三壮立どころに止こと神効あり
○又方乳の下。一指を留むばかりに当りて正に乳と相直る胸肋の間。陥なる中に灸すること三壮。女人ハ乳の頭を屈めて之を取り灸す。男ハ左り女ハ右り肌に至れバ立所に治す神のごとし
○音失がたきにハ。魚際。合谷。間使。然谷。肺兪。腎兪に灸すべし
○喘息にハ合谷。大谿。上星。太陵。列缺。下三里等に久しく針を留めて其気を 下すべし
○哮喘にハ天突に五壮又細き蝋縄の類を頚に套て前に垂しめ。鳩尾の骨の尖りを量り其両端を後に旋し脊骨の上へ索の蓋る所に点記し灸七壮より二十一壮
○痰喘には膏肓兪に灸し。腎兪に灸し合谷に針し太淵に針し?中に二十一壮神効あ り

(14)膝脚門

○足の内外の踝し紅く腫れて日久しく膿ず。微しく痛て座しがたきには騎竹穴に 灸七壮。若愈されハ更に灸すべし
○足脚輙ち轉筋りして痛忍びがたきにハ承山に灸三十一壮。若し内らの筋攣にハ内踝しの尖りに七壮外の筋急にハ外踝しの尖に七壮妙とす

(15)手臂門

両手倶に大に熱して火の中に在ごときにハ。湧泉に灸五壮立どころに効あり
○左りの手足倶に何となく倦く力なきにハ神闕に百壮如しそれにて愈ざれは五百 壮を灸すべし
○手の五指倶に屈んで伸ざるには曲池。合谷。中?に針すへし伸て屈ざるによし

(16)鼻病門

凡水出るを?といひ血出るを衄といふ倶に風府。迎香。上星に十四壮灸す。太冲。 絶骨。合谷。太陵。尺沢。神門等を治すべし
○衄血止ずして?して言語こと能ハざるにハ肺兪。合谷。間使。大谿。霊道。風府 。太冲等治すべし
○鼻塞るにハ臨泣。合谷に灸すべし。
○鼻の中に?肉を生じて涕出にハ上星に百壮。迎香。神門。合谷。肺兪。尺沢。? 会皆灸すべし

(17)痢疾門

○赤白痢には臍中に百壮神効あり
○脱肛にて苦しむにハ神闕に年の壮百会に二十一壮膀胱兪に三壮
○大便秘結し絞重きにハ巴豆の肉を練りて餅のごとくし臍の中におき其上に灸三 壮即効あり

(18)痔疾門

痔ハ凸の肉孔の中より出るなり是肉に三稜針を用ひて多く血を取棄れバ立所に治愈す
○又方凸の肉に灸すること百壮即ち平ぎて効を奏す
○痔疾種々の症ありといへとも百会。?門等に灸して神効あり

(19)労?門

労?には独り艾火を以て貴とき針術薬餅ハ功大に微し。脊の第三椎より十五椎の尖に灸して効あり。或ハ脊骨を挟んで両傍とも其病欝の気の聚つ所を見認て数所を 焼べし
○四花患門等に灸五萬壮妙
○又方腰眼の穴に艾を安し山椒の末を密に練りて餅の如くし其四畔を?て火気を留しめ。数日灸して三万壮に至れバ族類に伝る虫を殺す是を遇仙の灸と名附神効有

(20)四花穴法

第二穴ハ先患人を平身に正しく立し蝋縄を以て。男ハ左り。女ハ右の足の大拇指の端に縄の頭を当て足の掌に循し後に向ハしめ膝の胸りの所大横紋に至りて截断偖患人の髪を解き両辺へ分平身に正しく坐セしめ彼足を量りし縄を鼻の尖乃上にあて指にて按へしめ縄を引て上に向ひ頭の正中皮に循にて脳後に至り肉に付て垂れ下し背骨の正中に当て縄の端の竭所に記しを附け郤て病者の口を微しく合さしめ短き蝋縄を以て口の左の角より上へ唇の吻に循て鼻の根に至り斜に下し口の右の角に至るなり是の如くなして截断此縄を展べ中を摺り墨にて記し先に記したる背中の骨の上に圧し当て墨と記とを合せ横に左右へ濶き平かにして高下もなく縄の両頭の竭ところ墨にて記すべし灸穴なり

第次のニ穴ハ病人を平身に正しく座セしめ両肩を脱し蝋縄を以て項を繞ハし前に向ひて雙筋にし垂下し鳩尾の尖りと齊しくなし即ち雙べ截る是縄の中心を喉の結骨の上に着て縄の両頭を引て後へ向へ背骨の正中に当て縄の端の盡るところ墨にて記す郤て病者をして口を合さしめ短たき蝋縄を以て横に口の両吻を一文字の如く截取る中より摺り墨にて記し背骨の上の前に点する所に推あてて前のことく横に両端の盡ところに墨にて記す是四穴を共に同時に灸各々七壮より十五壮に至り百壮にいたる或ハ百五十壮神効あり灸瘡初て發るときを候にて後の法に依て又ニ穴に灸すへし

第三のニ穴ハ第次の口を量る一文字の縄を中より摺り墨にて記し第次の背骨の上へ正中に推あてて上下に開き縄の端し上下盡すところ墨にて記す是四花の穴より灸すること各々百壮第三ともに六穴也日輪の火を取て是に灸すること奇効あり尤妙とす百日の中飲食房労を慎ミ身を静かなる所に置て心を安んじ三十日の後尚いまだ愈ざるを覚ときハ復初の灸穴に再灸す

(21)小兒門

小兒門図説 ○遊風の毒胸腹に入即は死なり是時急に三稜針を以て紅き所を乱刺して多く悪血を出し翌日更に紅赤の所を見て右のごとく針刺す奇効あり
○驚風には神道に灸七壮より百壮に至る
○陰卵偏く大にして腹に入たるにハ太冲独陰気海三陰交関元を治すべし
○雀目にハ手の大指の甲の後乃第一の節の内の横紋の頭白肉の際に各灸一壮。肝兪に九壮
○兒生れて十七日の内啼こと多く。客風臍に中りて心脾に至るにハ神門合谷太冲 列缺各灸七壮
○先に驚て後に啼ことの噪しきにハ百会に七壮齦交間使に五壮
○浮腫ありて気促するにハ水分に三壮三陰交に三十壮脾兪に三壮奇効あり
○乳を吐にハ。中庭。亶中の下一寸六分に灸すること五壮
○四五歳まで言いわざるにハ心兪。足の内踝しの尖の上に各々灸すること三壮
○臍の腫るにハ。臍に対する。背骨の上に灸三壮。或ハ七壮奇効あり
○小便通ゼさるものにハ。百会に七壮。湧泉に三壮。胞門に五十壮。而して後。芭豆の肉を搗て餅となし。臍の中に填て灸五七壮妙
○口噤ずるにハ然谷を治べし
○善驚にハ然谷
○多く哭にハ百会
○遺尿にハ気海に百壮。太敦に三壮妙効あり
○夜々魘を見。怯へ或ハ自汗し驚き悸ぎし。或ハ詈りて息ず。又ハ譫語をいふハ心兪に百壮。腰眼。太陵。湧泉。後谿等に三壮即効あり

(22)五癇門

△夫急驚風ハ。風に因て作る或ハ禽獸?犬の声を聞て作る。口涎れを生じ。一身? 溺し。身口皆熱し其発るや暴烈し。惺て後。旧のごとし慢驚風ハ大病の余或ハ大吐の余に発するものなり。内大に虚乏し其身口鼻の気出れとも皆冷時々??す或 ハ昏睡して晴を露乃類ひなり右急慢驚の両症ともに気絶するものハ先太衝の脈を診に絶ざるものは。必治すべきなり
○其治法にハ百会に三壮灸す。或ハ臍の中に百壮神効あり
△医多くは大?を以て灸壮を多くセず。僅かに十四五壮にして止。曰く不治なりとす歎すべし予往々是症に溝ことに先太衝の脈を診して未絶ざるものハ肝兪鬼眼神 庭百会等に灸し。後に神闕に灸す五十壮より百壮二百壮にいたりて輒ハち効を奏することあり
△案るに火気神に徹せずんハ験なし。神を補ふに火気を以てす火気能生を回す。神また火気を得て盛なり。効あるかな艾火の神を殷にし。病を減ず孟軻の曰く三年の病に七年の艾を用ゆと。若之に據バよく治セざるもの疾ひならん乎
馬癇にハ金門神門臍中に三壮
羊癇にハ大椎に三壮第九椎の下に三壮
牛癇にハ鳩尾に五壮三陰交大椎を治す
?癇にハ百会間使絶骨申脈七壮
犬癇にハ労宮申脈に各一壮づつ
猪癇にハ太淵巨闕絶骨に三壮
食癇にハ鳩尾の上五分に三壮三陰交

(23)婦人門

婦人多くハ血病なり。経水期なくして来ものハ血虚して熱あるものなり。経水来んとするに痛を作ものは血実して気の滞るなり
○婦人月水調ハず。或ハ小産の後滞下腹痛口乾き発熱し大腸調ハず。時々血を下し久しく懐孕ざるにハ石門に七壮より百壮に至る。曲泉に三十壮奇効あり
○女子十五六歳にして経水行ず日夜寒熱往来し手足痺れ食進ず。頭痛心悪く嘔吐し腹中塊ありて否へ痛にハ。天枢に百壮章門。大腸兪。曲泉。曲池。臍に対する背骨の上に二十一壮灸す即効あり
○陰挺の出るにハ。照海。太敦。大谿。陰?。曲骨。曲泉に三壮
○血塊ありて月事調ハざるにハ。関元間使。陰?。天枢。皆針して奇効あり
○臍下に冷疝ありて時々痛にハ。気海。独陰。陰交。太冲に灸すること百壮より二百壮
○赤白の滞下にハ。曲骨に七壮。太冲。関元復留三陰交天枢に一百壮灸す
○月経の通ゼざるにハ。合谷。陰交。血海。気衝に針すべし
○血淋にハ。丹田に七壮より一百壮に至る
○淋瀝にハ照海。曲泉。小腸兪。皆針して神効あり
○悪血にて腹痛するにハ。石門に十四壮より百壮に至る。陰都。巨闕を挟むこと一寸五分にして下の二寸に直る。灸三壮針を禁ずべし。一度針セバ身を終まで子なし。四滿ハ臍の傍を挟むこと五分にあり下の二寸直る。灸三壮神効あり
○乳癰にハ騎竹馬の穴に灸す妙効
○乳の汁なきにハ亶中に七壮より五十壮に至る妙とす。是穴所ハ針を禁ず
○陰中乾き痛て陰陽を合すること能ハざるにハ曲骨に五十壮奇効あり
○小便より血交り出るにハ。膈兪に針すること三分留むこと七呼灸三壮
○月事断ざれハ陰陽に三壮。陰交に百壮

(24)風癩門

鼻塞り面熱して夜寝れハ鼻より血を出し。眉毛堕落眼?腫れ。一身?痒瘡を成す。三稜針を以て一二日を間てて身上の閉黒きところを乱刺し。閉汗出るに至こと百日。又針して骨に至こと初のごとく。汗出ること百日鬚眉生じて後に即止なり。灸もまた閉黒きところに随て佳し。只調摂ハ専ら針灸の法に依る。慎で風寒に触ことなかれ良効あり。治穴ハ委中。尺沢。太冲。皆針して血を出し棄ること糞のことし。池門。中渚。絶骨。崑崙。申脈。太淵。照海。内関。合谷。心兪。肺兪 。胃兪。脾兪等皆治すべし

(25)急死門

中悪と名く疾あり。是病ハ悪き気に中るなり。皆陰中乃毒気なり人多くハ莽々たる草の中。或ハ生茂りたる藪の裏或ハ人常に行ぬ墓原にいたり。或ハ古き井口に入りて忽ち急死することあり。是時忽に百会に二十一壮間使。年壮。承漿に七壮 。人中に五十壮。陰卵の下十字の紋に三壮。神闕に百壮。下三里に七壮。大に神効あり皆能生を回さずといふことなし
○溺水して死したるにハ。神闕に百壮。即ち活ること神のごとし
○弔死したるにハ。先心下を候ふべし。微にても温りあれハ必活べし。法に首を縦めずして索を解おろし。衣服を取。温なる所に安く臥しめ。厚く畏きびしく肛門を填め。一人ハ頭髪を引。縦めず。一人ハ胸肩を摩り頻々屈め伸し後。竹の管を以て両方の鼻乃孔を吹バ即ち活べし。奇々妙なり必ず鍼灸を急ぎ施すべからす。三日を過して章門を焼こと二十一壮
○中暑にて死セんとするにハ急に両乳の上に灸すること七壮妙効あり

(26)草度方

草度法解説血気形志篇に曰く。背の兪を知んと欲セバ。先其両乳の間を度り。中にこれを折り。更に他の草を以て度り半を去己り即ち両隅を以て相柱すといへり

△両乳を度るに古昔ハ細長き草を以て量しなり。今ハ蝋縄を用ゆ。便利なる故なり。蝋縄を以て両乳の間を量り是を八寸と定む。偖八寸の尺を真中より折バ偏々 四寸となる之

八寸の蝋縄を二つに折ハ偏々四寸づつになるなり図上のことし

更に他の草を以て度とハ改めて。別に外の蝋縄を以て前の中に折る四寸の尺にくらべ是をも又四寸とす図左のごとし

別の尺を以ての解説更に別の尺を以て前の偏々四寸にくらべはかり取なり

半を去己るとハ右の四寸の尺を又真中より二ツに折之二ツに折ハ二寸となる偏々捨て二寸を取故に半を去と云

上ミ二寸を切捨 下二寸をもちゆ

此二寸の尺を以て法とし紙を四角に切て二寸四方となす。是を筋違に折角と角と重合セて三角鱗の象となすなり。即ち両隅を以て柱すとハ是を云なり。隅とハ角なり四角の紙を角と角とを合すれハ三角となる。是形を柱すといふ図左のごとし

此二寸乃紙を法とし是の如く二寸四方に紙を截なり

二寸四方の紙を図の如く筋違に折るなり是を斜に折といふ是上にいふ所乃角と角と合する也

三角の象

三角の象隅ハ角なり三隅とハ三角なり上ミの筋違に折たる此のことく三角になり鱗形のごとく琴柱に似たり経文の柱の字バ是義なり
右の三隅の象をあげて以て背を量る上ミ乃尖りを大椎に当下の両傍乃尖り便ち背の二行にあるなり図の如し
下両隅の端に点す両兪相去こと全く三寸之これ背兪扁と相合す

三角の象図説

(27)禁針穴の歌七首 数々唱て記憶すべし

○二十二穴針を忌べき所あり脳戸?会に神庭乃穴
○承泣と承霊ハなを玉沈角孫顱?絡却をセす
○神道ニ霊台亶中忌べきぞ神闕会陰水分の穴
○横骨とい気衝手の五里三陽絡箕門承筋及び青霊
○遇て肩井ふかく刺ぬれバ人ハ気絶すものとこそしれ
○雲門と鳩尾を嘗て刺なかれまた缺盆と客主人なり

(28)禁灸穴の歌

○禁灸ハ四十五ところあるぞかし承光?門風府なりけり
○其つぎハ天柱素?臨泣に睛明攅竹迎香乃かず
○第三ハ禾?顴?糸竹空頭維と下関と背中の穴
○乳の中と又人迎と天?と肩貞心兪白環をいむ
○鳩尾と魚際と淵液に少商天府腹哀ハセず
○隠白に漏谷条口陰陵泉灸を忌べし陽池陽関
○殷門に委中の穴ハ猶さらに陰市申脈承扶いましめ

(29)針灸の吉日

丁卯 丁亥 庚午 庚子 甲戌 甲申 丙子 丙午 癸丑 丙戌 壬午 壬子  壬戌 辛卯 戊戌 戊申 己亥 乙巳 丁丑 丙申

(30)針灸の忌日

毎月 六日 十六日 十八日 二十三日 二十四日 晦日 又三日十五日晦朔節に入の前後一日ハ凶なり

仮名読鍼灸治法 巻之下終