上咽頭へのアプローチについて/Bスポット療法(EAT)とスートラ・ネティ(Sutra Neti)

今年の花粉症は例年になく酷いですね、、。セルフケアとして鼻うがいを日課としていましたが、スートラ・ネティに出会い、Bスポットと共通するところがあるのではないかと調べてみました。

COVID-19の後遺症 に対して、医療機関でEAT(Epipharyngeal Abrasive Therapy/上咽頭擦過療法)を受けたという方が、ここ最近、ちらほら来院されます。以前はBスポット療法とも呼ばれていましたが、最近ではEAT(上咽頭擦過療法)ということらしいです。この治療法自体はかなり古くから知られていましたが、ここにきて急に脚光を浴びた感じです。ここでは、Bスポット療法として説明します。

鼻の奥と喉の境目にある上咽頭(じょういんとう)のことをBスポットといいます。この部位は外気やウイルスが最初に触れる場所で、慢性的に炎症が起こりやすいポイントになります。

この上咽頭に炎症がある場合に、綿棒に薬剤(主に塩化亜鉛)をつけて、上咽頭をこすって刺激する治療法がBスポット療法です。はっきりとしたメカニズムは研究途中ですが、上咽頭炎が様々な症状を引き起こしていると考えられています。上咽頭炎と自律神経との関係についても言及されています。

Bスポット療法をはじめに提唱されたのは、おそらく堀口伸作教授でなないでしょうか。光文社から1984年には『原因不明の病気が治る/Dr.堀口の「Bスポット療法」』が上梓されています。

まえがきではこのように述べられています。

「残念なことに、私のこの仕事は、きわめて平凡であるがゆえに、そしてまた、それが思いがけない結果をもたらすことが多いゆえに、”正統派”の医学の専門家の方々には、なかなか受け入れてもらえない。すでに二十年もまえから、学会にもいろいろと報告してあるけれども、いまだに無視されつづけているのが実情である。」

20年前とありますので、1964年ごろからすでに取り組まれていたことになります。新しい治療法が認知されるのには時間がかかるということなのか、何か他に理由があるのかわかりませんが、業界あるあるですね。

効果が期待される症状として、書籍の中では次のような疾患について説明されています。
頭痛・めまい・肩こり・首のこり・気分のイライラ・不眠・疲れやすい・微熱・食欲不振・鼻づまり・のどの異常感・自律神経失調症・アレルギー疾患 など

スートラ・ネティ(Sutra Neti)は、ハタ・ヨガの経典『ハタ・ヨガ・プラディーピカー』などで説かれる「シャトカルマ(6つの浄化法)」の一つです。単なる鼻掃除と思われがちですが、ヨガの体系では身体的そしてメンタル的な浄化と調和を取り戻すための重要なステップとされています。

上図をご覧いただくと、左上がスートラ・ネティで右下がジャラ・ネティ(Jala Neti)になります。ジャラ・ネティはネティポットを用いた塩水で行う鼻腔の洗浄法でです。初心者にはこちらがおすすめです。鼻うがいの元祖とでもいうべきシンプルでいて有効な方法です。

ゴム製のカテーテルや、伝統的なワックスで固めた綿の糸を用いて行う鼻腔の洗浄法です。youtube上にもたくさん動画が上がっています。

①あごを少し上げ、頭を後ろに傾けながらカテーテルの先端を片方の鼻の穴にゆっくりと差し込みます。

②解剖学的な構造をイメージして常にカテーテルの先端が下向きになるように、鼻の奥に沿って、優しく押し進めていきます。決して無理に押し込まず、鼻の粘膜を傷つけないようゆっくり進めます。

③先端が喉の奥に到達すると、少しムズムズしたり、むせる感覚があります。途中で止まる場合は、カテーテルを優しく回転させながら進めます。

④口を大きく開け、人差し指と中指を喉の奥に入れて、カテーテルの先端をつかみ、口から先端を外へ引き出します。

⑤鼻から出ている端と、口から出ている端の両方を手で持ちます。ゆっくりと前後に数回(3回ぐらいでOK)スライドさせ、鼻腔内部を優しく刺激・掃除します。

⑥終わったら、ゆっくりと口側からカテーテルを引き抜きます。反対側の鼻の穴も同様に行います。

ヨガの教えでは、身体的な清潔さ以上に「エネルギー(プラーナ)」の流れを重視します。

カパラ・バティ(浄化)の促進
「ネティは視力を鋭くし、鼻の病気を追い払い、肩から上の病気を一掃する」と経典に記されています。

アジュナ・チャクラ(第三の目)の活性化
鼻の奥を刺激することは、眉間の間にあるとされる「アジュナ・チャクラ」を刺激し、直感力や集中力を高めるとされています。

呼吸(プラーナ)のバランス
左右の鼻の通りが均等になることで、陰(イダ)と陽(ピンガラ)のエネルギーバランスが整い、瞑想に入りやすい状態を作ります。

鼻腔内のクリーニング
鼻の奥に溜まった頑固な粘液(鼻水が固まったもの)や、空気中の汚染物質、アレルゲンを直接的に除去します。水を使う「ジャラ・ネティ」よりも強力な清掃力があります。

アレルギーに対する抑制
カテーテルが鼻腔の粘膜を物理的に刺激することで、粘膜が鍛えられ、花粉やハウスダストなどの外部刺激に対して過敏に反応しにくくなる、耐性がつくと言われています。

毛細血管の血流促進
鼻腔内の微細な血管が刺激され、血行が良くなります。これにより、鼻詰まりの解消や、副鼻腔炎(蓄膿症)の予防・緩和に寄与します。

自律神経への影響
鼻の奥には多くの神経が集中しており、そこを刺激することで、脳の視床下部や自律神経系に働きかけ、リラックス効果や頭のスッキリ感をもたらすと考えられています。

Bスポットは上咽頭に炎症がある場合に、綿棒に塩化亜鉛を塗布して擦過します。塩化亜鉛の薬理効果もあるかもしれませんが、炎症のひどいときは出血を伴うことがあります。この鬱滞している血液を排出することの効果もあると考えられます。

一方、スートラ・ネティは鼻腔から口にカテーテルを通すことで上咽頭に接触、擦過しますので炎症の改善やその予防的効果が期待でききるのではないでしょうか。

30年ほど前、「耆婆術」というセミナーが『医道の日本』誌(鍼灸の専門誌、廃刊)に載っていたことがあります。参加された方の話ですとBスポットによく似た施術法だと伺った記憶があります。特殊な例として舌や口内に鍼をすることがありますが、鍼灸の施術は通常体表に対するアプローチになります。

耆婆は古代インドの医者、ジーヴァカのことなので、「耆婆術」は中国ではなくインド由来の施術法かもしれません。

セルフケアとしては、塩分を含んだ温水による鼻うがいが痛みや刺激が少ないのでおすすめです。最近はいろいろなメーカーから鼻うがいのキットが販売されています。

上級者には、スートラ・ネティもよいかと思います。カテーテルを口から出すには少々コツが必要ですが、すっきり感は鼻うがいよりもあるかもしれません。鼻うがいのセルフケアで、辛い花粉シーズンを乗り切りましょう。