逆子の鍼灸|骨盤位に至陰の灸

骨盤位(逆子)について

頭が恥骨側にあって、臀部や足が上腹部側にある場合を「正常位」「頭位」といいます。一方、頭が上腹部側に臀部が恥骨側にある場合を「骨盤位」、いわゆる「逆子」といいます。

妊娠週数が進むにつれて骨盤位は減少しますが、28~31週で17%、32~35週で9%、36週以降で3.8%あるとの報告がされています。

骨盤位の分類には、殿位、膝位、足位があります。分娩時のリスクが高い順として、足位、膝位、殿位となり、初めに出てくる部位が大きいほどリスクが低くなります。

鍼灸の考え方

中医学では骨盤位のことを「胎位不正」といいます。その要因として腎虚寒凝・脾虚湿滞・肝気郁結との関係が指摘されています。

腎は生殖機能を司りますので、腎の働きが低下して、虚寒凝滞すると転胎する力が弱くなると考えらえれます。脾が虚して胎体が肥大すると動きに制限が生じます。また、ストレスや抑うつにより肝気がうまく巡らないと、胎体が転位しにくくなります。

これらの証に応じた施術を行うとともに、至陰や三陰交の施灸を行います。
逆子に対する鍼灸は80%以上の成功率があると記載されていますが、その施術するタイミングは重要な要素です。妊娠28~32週では90%以上、32週以降は減少傾向にあります。(「針灸臨床弁証論治」中医古籍出版社)

至陰(しいん)の灸

「鍼灸(はりきゅう)で逆子が治るの?」

素朴な疑問ですよね、、。

代表的な基本穴は「至陰」というツボになります。足の小趾(第5趾)外側の爪甲角より数ミリ外側の位置になります。

お腹から離れた、足の先にお灸をして逆子がよくなるなんて、なんて非科学的と思われるかもしれませんが、最近では鍼灸を取り入れている医療機関も増えているようです。至陰の灸の有効性を実証したRCT(タンダム化比較試験)によるレポートも国内外で発表されています。

至陰のお灸は古くから知られており、張介賓「類経図翼」(1624年)には、次のような記載があります。

張文仲婦人横産先手出。諸符藥不効。為灸右脚小指尖三壯。炷如小麥。下火立産。

張文仲 婦人横産し、先づ手出で、諸(もろもろ)の符薬効なし。右脚小指の尖に灸すること三壯、炷は小麦の如し。火を下せば、立ちどころに産す。

お灸の操作法

操作法には、 直接灸やせ○ん○灸、棒灸を使用した方法、三陰交への灸頭鍼の併用など各種あります。家庭で自分で灸を行うには台座灸や棒灸が簡単で安全ですのでお勧めです。

【メリット】

  • 操作法が簡単
  • 薬のような副作用がない
  • 心地よい熱さでリラックス効果
  • いつでも気軽にできる
  • コストが安い

【デメリット】

  • けむい →換気扇をONにして換気をしましょう
  • 匂い →アロマ効果を楽しみましょう
  • 火の扱いが心配 →水や火消し道具を利用します
  • 施灸の体勢がつらい →パートナーや家族の協力で乗り切りましょう

至陰に棒灸を15分づつ行います。下図は三陰交に棒灸をしている様子になります。

聞いてしまえば何てことはないですが、ポイントは下肢からお腹の方まで熱感が伝わり、ぽかぽかするような感じがあることが重要です。

お灸をしているとお腹が動いてその場で転位することも経験します。鍼灸の治効理論は分かっていないことも多いですが、至陰の灸はほんとうに不思議です。