こむらがえりに対する鍼灸のアプローチ

「こむらがえり(腓返り)」についてのご相談が続いたので、まとめておきたいと思います。こむらがえりは、多くの人が一度は経験するふくらはぎなどの筋肉の急激なけいれんのことです。その原因については、以下のような要因が考えられます。

筋肉疲労
激しい運動や長時間の立ち仕事の後など、筋肉を酷使したときに起こりやすいです。

血行不良
冷えや圧迫によって筋肉の血流が悪くなると、けいれんを起こしやすくなります。

水分・電解質(ミネラル)バランスの乱れ
汗をかいた後などに、水分・塩分・マグネシウム・カルシウム・カリウムなどが不足すると起こりやすくなります。

妊娠
特に妊娠後期の女性は、血液循環の変化や栄養バランスの影響でなりやすいです。

加齢
高齢になると筋肉量が減ったり、血流が悪くなったりして起こりやすくなります。

器質的な問題

糖尿病や肝機能障害、橋本病などでもこむらがえりが起こりやすくなります。

こむらがえりが起きたときは、以下の対処をすると効果的です。

ストレッチ
ふくらはぎ(腓腹筋)を伸ばすように、足のつま先をゆっくり手前に引き寄せる。
立位なら、壁に手をついてアキレス腱を伸ばすような姿勢で行います。

温熱療法
カイロや蒸しタオルで温めると血流が良くなり、筋肉がゆるみます。

マッサージ
優しくほぐすようにマッサージして、筋肉の緊張を緩めます。

服薬
病院では漢方薬(芍薬甘草湯:68)がよく処方されます。

水分・ミネラル分の摂取
運動時や汗をかく前後、夏の暑い日にはスポーツドリンクや水と塩分を補給します。
マグネシウム(ナッツ類、海藻類、バナナなど)やカルシウム(牛乳、チーズ、小魚など)を普段から摂取します。

ストレッチや運動
就寝前や運動前にふくらはぎを中心に軽くストレッチします。
ふくらはぎを鍛える運動(かかと上げ運動など)も効果的です。

冷え対策
就寝中に足が冷えないように、レッグウォーマーなどで温めます。
夏場のクーラーにも注意が必要です。

鍼灸マッサージ
定期的に鍼灸を受けられている方は、こむらがえりの起こる頻度が軽減されている方が多いです。

東洋医学ではこむらがえりのことを「転筋(てんきん)、抽筋(ちゅうきん)」といいます。甚だしいときは腹部まで拘急するともあります。

「血気皆少なければ、よく転筋す」との『霊枢』に記載があります。気血不足という言い方になりますが、血行不良といいかえることもできます(厳密には概念が違うのでイコールではないのですが)。

また、肝虚や腎虚の証でもよく見られます。肝の働きは、疏泄と蔵血機能です。疏泄作用が低下すると気の疏通が悪くなり、血の流れが悪くなります。肝は筋(腱や靭帯、ファシアなど)や眼とも関係が深いです。

腎の主な働きは、蔵精で精気を貯蔵します。腎精が不足すると、めまいや耳鳴り、腰や膝の痛み、物忘れなど、老化による症状がみられるようになります。 

※ここで論じる「肝」や「腎」は、肝臓や腎臓の臓器を指すのではなく、その働きのことです。東洋医学独特な考え方になります。説明も難しいです(汗)。

いずれも、気血が不足することで起こるけいれんは、主に体質的な虚弱、または長期の病気、気血不足、腱や静脈への栄養不足が原因と考えられます。

代表的な配穴

承山
転筋目眩針魚腹,承山、昆崑崙立便消。『席弘賦』

董氏奇穴
針中白穴、特効。
針八关三穴、八关四穴、特効。
針三叉一穴、三叉二穴、三叉三穴、特効。
針正筋穴、正宗穴、効佳。
針手解穴、立愈。
針三霊穴、特効。
習慣性抽筋:先在三霊穴放血。再配合中白穴、三叉穴、胆穴。
針正筋穴。
針次白穴。