イギリスの代表的な医学雑誌、BMJに片頭痛に対する鍼の有効性についての記事が掲載されました。概要を簡単にまとめました。
https://www.bmj.com/content/368/bmj.m697(BMJ誌2020年3月26日号)
研究内容
目的
前兆のない反復性片頭痛の予防的治療として、マニュアル鍼治療の有効性を評価すること。
2016年6月5日から2018年11月15日まで、中国の7つの病院にて研究が行われました。
無作為化試験
対象は年齢が15歳から65歳、病歴が1年以上、初発が50歳以下、鍼治療が未経験の前兆のない片頭痛の患者150人です。マニュアル鍼、偽鍼、通常治療の3郡に2:2:1の割合で無作為に分け、比較テストを行いました。試験期間は24週間。
①マニュアル鍼20セッション+通常治療
②経穴外の非貫通偽針20セッション+通常治療
③8週間の通常治療
マニュアル鍼の介入
【主穴】両側の合谷(L14)、太衝(LR3)、太陽(EX-HN5)、風池(GB20)、率谷(GB8)
【配穴】陽明頭痛には頭維(ST8)、太陽頭痛には天柱(BL10)、厥陰頭痛には百会(DU20)(三陽五会、督脈)。
【鍼具】直径0.30mm、長さ30mmを使用しました。滅菌後、尖った針をツボの深い組織層に挿入しました。次に、針を手動で操作し、得気を引き出します。治療時間は30分、各ツボの手動操作は10秒行い、10分間隔で4回繰り返されました。
結果
偽鍼と比較して、マニュアル鍼は13から20週で片頭痛の日数が大幅に減少し、17から20週で片頭痛発作が大幅に減少しました。この結果から、マニュアル鍼治療の20セッションは、偽鍼治療と、通常治療よりも優位に改善されたといえます。予防薬の服用に消極的である患者、または予防薬が無効である場合に効果が期待できます。
雑感
一般的に鍼治療の対象となる頭痛は筋緊張性頭痛や片頭痛が主となります。片頭痛はいったん発症すると薬を飲んでも効かないことが多い傾向にあります。発症する前に服用すること、タイミングが重要です。同じように片頭痛に対する鍼治療も発症する前、痛みが出ていない時に、定期的に行うことが大切です。継続することで発症頻度を軽減できると考えます。
片頭痛予防のために薬物療法は推奨されていますが、服用によって体重増加、睡眠障害、胃腸障害などのリスクや長期服用による頭痛や頻度の増加を引き起こす可能性があります。
2017年にはZhao等のグループが「片頭痛予防に対する鍼治療の長期効果ー無作為化臨床試験」を発表しています。https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2603492
結論から言うと、鍼による治療を開始後、16週以降で片頭痛発作の頻度に優位差が生じたとしています。片頭痛の頻度と片頭痛の日数の減少、痛みの強さの減少など、片頭痛予防において少なくとも24週間持続する優位性と臨床的に関連する利点を示しました。また、不安感やうつ症状、QOLの状態も改善もみられました。
鍼治療、偽鍼、無治療の3群にてランダム化比較試験を行っています。鍼の介入は、5日間連続治療を行い、2日休みの流れで、20回治療が行われました。
【主穴】率谷(GB8)、風池(GB20)
【配穴】外関(Sj5)、陽稜泉(GB34)、崑崙(BL60)、後渓(SI3)、合谷(LI4)、内庭(ST44)、太衝(LR3)、丘墟(GB40)
【鍼具】直径0.25mm、長さ25~40mmを使用しました。得気を生じさせた後、2/100Hzのパルス(3秒ごとに交互)をかける方法です。
本論文以外にも鍼の取穴部位や操作法には様々なものがあります。片頭痛には後頭下筋群のファシアリリースが有効との報告もあります。