後頭下筋群への鍼施術

「後頭下筋群」とは耳慣れない用語かもしれませんが、先日、「後頭下筋群」に鍼をしてくださいとの要望がありました。なんでも、どこかの番組だったか、メディアで放送があったのだとか、、。すごい時代です。

後頭下筋群はどこにあるか

解剖学的な位置を確認しておきましょう。固有背筋に含まれる短い項筋、深部の項筋のことで、小後頭直筋(①)・大後頭直筋(②)・上頭斜筋(③)・下頭斜筋(④)があります。

頚から背中にかけて僧帽筋に覆われています。その下方に頭板状筋、さらに頭半棘筋・最長筋などが位置しています。後頭下筋群はこれらの下層になります。

小後頭直筋(①)
大後頭直筋(②)
上頭斜筋(③)
下頭斜筋(④)

後頭下筋群の緊張は頭痛や肩こりの要因

後頭下筋群は頭部を支える姿勢筋です。長時間のデスクワークや悪い姿勢、猫背での作業は後頭下筋群が緊張する原因となります。

小後頭直筋と硬膜は筋膜結合組織でつながっています。後頭下筋群が凝ってくると、小後頭直筋から硬膜に緊張が伝播され、緊張性頭痛が起こると考えられています。

慢性的な頭痛や片頭痛には、後頭下筋群への鍼による施術が欠かせません。ネットが普及する前であれば、秘伝であったかもしれないですね。

後頭部にある経穴(つぼ)

後頭部には中心から外側に天柱・風池・完骨と経穴が並んでいます。いずれも代表的な経穴です。

後頚部周囲の緊張を緩めることは、鍼灸による施術では基本となります。頭頚部の血流がが促進されますので、首肩コリの改善だけでなく、頭部・顔面部の症状に対して効果が期待できます。下記の経穴の主治の内容からもその重要性が理解できます。

天柱【てんちゅう】
僧帽筋の外側にあり、下部は頭半棘筋、さらに深部には大後頭直筋・小後頭直筋があります。

天柱穴の主治としては、頭痛・首の強張り・鼻閉などがあります。

風池【ふうち】

頭板状筋、頭半棘筋の深部に上頭斜筋があります。

風池穴の主治としては、頭痛・眩暈(めまい)・項頚部の強張りや疼痛・眼の充血や疼痛・鼻炎・肩背部痛・発熱や感冒・耳鳴・癲癇などがあります。

完骨【かんこつ】

胸鎖乳突筋付着部上方にあり、下部に頭板状筋・頭最長筋、その深層に外側頭直筋があります。

完骨穴の主治は、頭痛・不眠症・頸項部の強張りや疼痛・頬部の腫脹・歯痛・口や眼のゆがみなどがあります。

【参考文献】『針灸経穴辞典』東洋学術出版社