「アドレナル・ファティーグ(副腎疲労)」と「腎」の関係|コルチゾールの減少が腎虚の一因か

アドレナル・ファティーグ(副腎疲労)とは

ストレスや疲労による副腎機能の低下は、うつ症状にも似たさまざまな症状を招きますが、従来の検査をしても異常がないことが多い。なかなか疲れが取れない、なんとなく身体がスッキリしない、やる気が起こらない等の半健康状態にあります。

この概念は1800年代にすでに報告されていましたが、未だ一般的に認知されるに至っていないようです。非アジソン病副腎機能低下、無症状性副腎機能低下、神経衰弱症、副腎神経衰弱症、副腎無気力症、副腎疲労症候群などを総称 して「アドレナル・ファティーグ」と定義しています。

Dr.ジェームズ・L・ウィルソン氏の著書『医者も知らない アドレナル・ファティーグ(邦題)』では副腎機能とホルモンのバランスの乱れが健康に及ぼす影響について詳しく述べられています。その特徴として下記のような症状を上げています。

アドレナル・ファティーグの特徴

  • 朝起きるのがつらい
  • 疲れが取れない
  • 塩辛い食べ物が無性に欲しくなる
  • 倦怠感(エネルギー不足)
  • 日常的なことが、とても疲れる
  • 性欲の低下
  • ストレスに対処できない
  • 病気や怪我、外傷(トラウマ)から回復するに時間がかかる
  • 頭がクラクラする
  • 人生のすべてが虚しい
  • PMS月経前症候群)の悪化
  • カフェインがないと、仕事ができない
  • 思考が定まらず、ボーっとする
  • 記憶があやふや
  • 午前10時まで目覚めない
  • 午後3時から4時の間はぼんやりしている
  • 夕食後、やっと元気になる
  • 仕事がはかどらない

副腎とは

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図1.腎臓と副腎

副腎は腎臓の上部に位置しており、形状は小さいながら多種のホルモンを分泌する重要な臓器です。皮膚疾患や炎症を抑える薬で有名なステロイドホルモンはこの副腎皮質で作られています。

副腎は皮質と髄質の二層構造で、副腎皮質ホルモンには体液のバランスをコントロールするアルドステロン、糖質コルチコイド(コルチゾール)、性ホルモン(アンドロゲン)があります。副腎髄質ホルモンにはエピネフリンアドレナリン)、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)などがあります。

アドレナル・ファティーグのカギとなるのは副腎皮質ホルモンのコルチゾールです。別名ストレスホルモンとも称されます。生体にストレス(正確にはストレッサー)がかかると視床下部-下垂体-副腎系を介してコルチゾールを生産します。しかし、継続的にストレスがかかると副腎が疲労してコルチゾールの分泌量が減少し、さまざまな症状が生じることとなります。

コルチゾールの作用は多岐にわたり、血糖濃度の正常化、抗炎症効果、白血球への影響、循環器や中枢神経系への作用などがあります。

アドレナル・ファティーグからの回復

ライフスタイルの見直しが重要

重要な点は生活習慣(ライフスタイル)の見直しにあります。飲食や思考、信念にも左右されます。このあたりも本書に詳しく書かれています。特別なことが説かれているわけではありませんが、現代人にとってはなかなか継続的な実行が難しいことも多いかもしれません。アドレナル・ファティーグにとってコーヒー(カフェイン)は大敵とされますが、珈琲党にとっては決断しづらいところです。

参考までに本間良子著『しつこい疲れは副腎疲労が原因だった』「回復のために今日からできる7つのこと」から以下に引用します。

1.朝、コップ一杯の塩水を飲む
2.ビタミンB群を摂る
3.タンパク質と野菜・果物をたくさん摂る
4.5分でいいから昼寝をし、夜は極力11時までに寝る
5.小麦と砂糖、牛乳を減らす
6.毒素を摂らず、排出する
7.ストレスをコントロールする

「腎」の働き

鍼灸医学でいうところの「腎」は、現代医学の「腎臓」のことではなくその働きをさします。「腎」の主な働きには、精を貯蔵しておく蔵精、水液代謝を調整する主水、吸気を肺から腎に降ろして納める納気などがあります。

「腎」の病症については腎陽虚、腎陰虚、腎気不固、腎精不足などに分けることができます。

腎陽虚(腎精不足)によるものは、足腰の冷えとだるさ・手足の冷え・泄瀉・精神萎縮・陽萎・遺精・不妊などがあげることができます。

腎陰虚では遺精・無月経・眩暈・健忘・聴覚や視力、歯の衰えなどが見られるようになります。

「腎」の病症と「アドレナル・ファティーグ」の症状を比較してみると共通点が多いことがわかります。塩辛い食べ物が無性に欲しくなるというところも興味深いところである。

中国伝統医学では陰陽論や五行論によってからだの働きを考えています。五行論では木火土金水の5つの要素にカテゴライズします。五臓でいえば肝は木、心は火、脾は土、肺は金、腎は水となり、五味では酸は木、苦は火、甘は土、辛は金、鹹(しおからい)は水となる。腎は鹹(塩辛い)性質と相関関係があるということです。

塩辛い食べ物が無性に欲しくなる理由について前書では次のように説明がされています。副腎髄質のホルモンであるアルドステロンは、血液や細胞、細胞間の体液量やナトリウムやカリウムなどのミネラルの濃度を調整する働きがあります。アドレナル・ファティーグによりアルドステロンの分泌量が減少するとナトリウムが水分と共に尿として排出されてしまい、その結果、細胞内のナトリウムが不足し、また、カリウムとの平衡を保つためカリウムも減少します。そのため、アドレナル・ファティーグになるとポテトチップスや味の濃い塩辛いものを欲するようになります。無気力になったり、立ちくらみがするようになるのもナトリウム不足が原因と考えられます。

「ストレスチェック」との比較

「労働安全衛生法」の改正により労働者が50人以上の事業所では、2015 年12 月から、毎年1回「ストレスチェック」を全ての労働者に対して実施することが義務付けられました。そのストレスの要因(ストレッサー)はさまざまですが、企業側には仕事の軽減や職場環境の改善などの措置を行うことで、「うつ」などのメンタルヘルス不調を未然に防ぐことが求められています。

「ストレスチェック」簡易調査票

最近1 か月間のあなたの状態についてうかがいます。(4段階で判断)

1. 活気がわいてくる
2. 元気がいっぱいだ
3. 生き生きする
4. 怒りを感じる
5. 内心腹立たしい
6. イライラしている
7. ひどく疲れた
8. へとへとだ
9. だるい
10. 気がはりつめている
11. 不安だ
12. 落着かない
13. ゆううつだ
14. 何をするのも面倒だ
15. 物事に集中できない
16. 気分が晴れない
17. 仕事が手につかない
18. 悲しいと感じる
19. めまいがする
20. 体のふしぶしが痛む
21. 頭が重かったり頭痛がする
22. 首筋や肩がこる
23. 腰が痛い
24. 目が疲れる
25. 動悸や息切れがする
26. 胃腸の具合が悪い
27. 食欲がない
28. 便秘や下痢をする
29. よく眠れない

アドレナル・ファティーグの特徴と類似した項目も多いが、怒りを感じるやイライラ感は肝鬱の症状であるし、胃腸障害や睡眠障害は自律神経失調の症状によくみられるものです。どちらかというと、アドレナル・ファティーグの特徴は電池切れのような感じがあります。

鍼灸による「アドレナル・ファティーグ」へのアプローチ

ストレスは「肝」との繋がりがよく指摘されますが、アドレナル・ファティーグは「腎」との関係でアプローチするとよいのではないだろうか。

それほど単純なものではないと思いますが、今後の課題としたい。。

※2014/3/19「鍼灸鶏肋ブログ」の記事を加筆修正しています。