足底筋膜炎の鍼灸

足のトラブルあれこれ

痛み、しびれ、むずむず感、掻痒感、冷え、浮腫、強張り、こむらがえり、知覚過敏、脱力など、なんとなく違和感がある程度から、痛みで歩行困難なものまで足のトラブルは多岐にわたります。その原因もさまざまです。

足関節捻挫、外反母趾、モートン病、巻き爪、たこ、魚の目、足底筋膜炎、皮膚疾患、痛風、糖尿病による足趾の症状、むずむず脚症候群など、局所的な問題、内科疾患やホルモンなどの影響による症状があります。ここでは、足底筋膜炎(足底腱膜炎)について考えてみましょう。

足底筋膜炎とは

踵骨(かかと)に付着している足底筋膜(腱膜)の炎症のことをいいます。足底腱膜炎と呼ぶこともあります。足底筋膜に繰り返し負荷が加わると、筋膜付着部に腱膜炎、骨膜炎、滑液包炎などを生じ、足底筋膜炎となります。

朝、起床して足を一歩床につけると強い痛みを足底に生じるのが一つの特徴で、歩行時・運動時に痛みがあります。足底腱膜が慢性的に伸ばされると踵に骨棘が形成されることもあります。

中高年層では、重い荷物を持って歩いたり、立ち仕事などで足底部に過度に繰り返し負荷をかけるような動作、姿勢が一因となります。男性に多い傾向にあり、比較的太っている方によくみられます。

若年層では、スポーツやダンスなど、ランニングやジャンプなどを繰り返す動作(オーバーユース)が引き金となることが少なくありません。

足底腱膜炎は中高年だけではなく、若年層にもみられる症状です。

扁平足やハイアーチ、回内足、回外足による、足部アーチの低下、下肢アライメントの状態なども発生要因として指摘されています。

足底筋膜炎の鍼灸

ストレスの軽減

足の裏の緊張している部分や痛みのある部位に鍼を施すというのも一つの考え方ですが、足の裏への鍼の刺激は痛い割には効果が持続しないことが多いような印象です。

まず、基本的な考えとして、オーバーユース(使いすぎ)が疑われる場合は、運動量や負荷の軽減、安静が必要となります。マルユース(誤使用)によるものであれば、その原因を確認します。足の問題は靴の影響も少なくありませんので、履いている靴が足に合っているか、ソールがすり減っていないか見直すことも大切です。場合によっては、アーチサポートのためにインソールを使用します。

常に重い鞄を持たれる方は、リュックサックを利用して左右均等に負荷をかけるようにするなど、日常の小さなことの積み重ねの結果、痛みが生じたとの視点が必要です。

ストレッチと筋力強化

足底筋膜炎を訴えられる方の足底は硬く、緊張していることがほとんどですが、ふくらはぎ(腓腹筋部)や大腿部(ハムストリングス)、臀部なども張って凝っている方が少なくありません。足底筋膜炎の痛みをかばうように歩いたり、動くことで大腿部や臀部が緊張します。慢性的な下肢筋肉の柔軟性の低下は足底筋膜炎を発生させる要因とも考えられます。

下腿後面に位置している後脛骨筋は足底のアーチを形成する役割がありますし、ふくらはぎ(腓腹筋やヒラメ筋)の短縮は足関節の動きを制限します。

下肢の筋肉の柔軟性を保持し、筋力強化によって足底筋膜への負担を軽減することは再発を防ぐためにも大切なことです。

足のアーチが低下している方には足の指でタオルを引き寄せるタオルギャザーや足趾でビー玉を掴んだり、つま先立ち、小指球(足の外側)での歩行など、足の指を使う運動がおススメです。これらの運動を行うことで足底固有筋を鍛え、アーチの低下を軽減します。

局所に対する施術

一般的には足底筋群の緊張緩和を目的として、足底の湧泉穴や圧痛部(短趾屈筋)へ刺鍼、筋パルスを施します。足関節部の太谿穴・崑崙穴・申脈穴・照海穴への刺鍼を施します。

遠隔部への施術

疏通経絡で考えれば、足の太陽膀胱経(下肢後面)・足の少陽胆経(下肢外側)の経穴を使用します。解剖学的には、足底筋膜部への負担を軽減するために、臀筋や大腿部(ハムストリングス)、腓腹筋部の凝りや緊張を緩めます。

骨の調整

足部アーチの低下の改善を目的として、骨の動きを制限している重積した軟部組織(ファシア)をリリースします。骨間筋が硬くなっていたり、弱くなっている場合も少なくありません。靴の生活により、足趾を使うことが少なくなっていることも一因でしょう。日ごろから足の指を使うような運動をすることも必要です。